ゴー!医見

つばさクリニックでは毎月院内広報誌「ゴー!つばさ」内の院長のエッセイです

2月11日に鹿児島県の知覧特攻平和会館(以下、平和会館)に行ってきました。九死一生ならぬ、十死零生と言われた特攻作戦。その無謀な作戦のために散華した特攻隊員たちの遺影や遺品、遺書や手紙が多数展示されています。


散華


若くして戦死することの婉曲表現として散華という言葉が使われます。戦死よりも、はかなくも美しいイメージが湧きますよね。平和会館に展示してある遺書や手紙はどれも見事な達筆で、気高くも美しい文章でした。特攻隊員というのは学歴の高い人が多く、それだけに自らの死の意味というものを真剣に考えたのだと思います。頭脳明晰な彼らには特攻作戦のバカバカしさは十分に分かっていただけに、その中に自らの死の意義を見出すというのは想像を絶する葛藤があったものと思います。検閲の影響もあったと思いますが、残されている遺書や手紙には直接的な表現は見られません。でもそれだけに、行間からにじみ出る彼らの胸中を思うと目頭が熱くなりました。


特攻の母


昼食は平和会館の入口の横にある「知覧茶屋」で食べました。「特攻の母」と呼ばれる鳥濱トメさん、知覧基地近くの「富屋食堂」の女将さんで、特攻隊員たちが母親のように慕っていた女性です。今はその魂を引き継いだひ孫さんが料理長をしています。特攻隊員たちもこういう味のものを食べたのだと、79年前に思いを馳せながら心を込めていただきました。

俺は君のためにこそ死にに行く

2007年に上映された映画です。トメさんと特攻隊員とのふれあいを通じて彼らの葛藤や無念さを描いた物語です。窪塚洋介、徳重聡が特攻隊員、岸恵子がトメさんを演じました。岸恵子が素晴らしかったですね。出陣前夜、愛する家族や恋人との最後の夜を過ごす若者たち。しかし門限時間が近づくと憲兵が宿舎に帰るよう命令します。その時トメさんが叫びます。「明日お国のために死にいく若者たちになぜ門限が必要なのですか!」憲兵に暴行を受けても身体を張って抗議するトメさん。何度見ても涙が溢れるシーンです。

東京裁判史観

16年前、この映画のことを「特攻を美化している」と批判する人が結構いました。恥ずかしながら、私もその一人です(笑)。2008年1月号の「ゴー!つばさ」の一部を紹介します。

生き残った兵士とトメが終戦後護国神社を訪れるシーンは最悪です。特攻で散った同僚の兵士たちが楽しそうに出迎えているのですが、誰もが満面の笑顔なのです。無念の死を遂げた若者たちがこんな嬉しそうに眠っているはずがありません。戦争を美化したシーンです。

赤面の至りとはこのことです。当時は完全に東京裁判史観に染まっていました。東京裁判史観というのは「あの戦争は侵略戦争であり、全面的に日本に非がある。だから日本人は一生その罪を背負って生きなければならない」というものです。戦後の教育は今なお、全てこの方針のもとに行われています。真面目な石川少年もそれを無批判に受け入れて来ました。

実は、この映画を知覧に行く直前にも、行った直後にも観ました。観るたびにその深さが理解でき、16年前のナイーブな自分を恥じるばかりです。先月号で紹介した「ゴジラ-1.0」と同じように、あの戦争を総括するために、全ての日本人が観るべき作品だと思います。


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つばさクリニック院長 石川 亨


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