ゴー!医見

つばさクリニックでは毎月院内広報誌「ゴー!つばさ」内の院長のエッセイです

3月10日に岩手県大槌に行って来ました。体調を崩している小川さんに会うためです。9日は岩手県の花巻温泉に泊まり、翌日レンタカーで大槌に向かいました。つい最近開通したばかりの三陸横断自動車道(無料)を利用したおかげで花巻から大槌まで 1 時間ほどで着きました。

地域医療崩壊

小川さんは顔色はいいのですが、歩くときにびっこを引いていました。実は小川さん、今年の1月に自宅の階段から転落し、釜石市の病院に入院したのです。骨折はないと言われたのですが、入院中も退院後も体重をかけたときの痛みが続いているとのこと。何度も通院しているのですが、あまりきちんと診てもらっていない様子でした。
震災の影響もあって整形外科のある病院はなく、お隣の釜石市に3つあるだけです。多忙なこともあって、目の前の病気や怪我に対応するのが精一杯のようで、小川さんの話をじっくり聞いてくれる雰囲気は全くない、ということでした。
随分前から地域医療の崩壊という事が問題になっていますが、その対策として単に病院や医師の数だけを揃えても問題の解決にはならないことを痛感しました。患者さんの病気や怪我を治すだけでなく、その人の生活、人生を考えてくれる、本当の意味でのかかりつけ医がいなければ地域医療は成り立ちません。地域に住み、地域や人々を愛する医師を育てる、そのためには地域に活力があることが前提になります。

人からコンクリートへ

かつて民主党が政権を取った時、「コンクリートから人へ」という理念を掲げました。道路や橋やダムの建設にお金を使うのはやめて、医療や福祉、教育に使いましょう、というものでした。今、大槌周辺で行われているのは真逆です。三陸横断自動車道に加えて三陸縦断自動車道も開通しましたが、ともに民主党政権時代の「仕分け」で中止となった事業です。震災前から利用者減のために存続が危ぶまれていた三陸鉄道も復活しました。1両編成のカラフルなデザインの列車が走る姿はけなげで、絵にはなりますが、残念ながら何度見ても大槌駅では乗客を見かけませんでした。この日は翌日の震災慰霊式典の関係で、普段より県外からの客が多いのにもかかわらず、です。

高度成長のなれの果て

午後3時過ぎに小川さん一家に別れを告げて、帰途につきました。のぞみ号から見る東京の街は、高層ビルが立ち並び、街灯やネオンがまばゆいばかりに輝いて、日曜日の夜だというのに大勢の人が歩いていました。ほんの6時間前に見た風景とは天と地ほどの差がありました。
震災後の8年間で総額35兆円が投入された復興関連予算。復興したのは被災地ではなく東京でした。20年前のバブル崩壊で一度は破綻した不動産屋と土建屋でした。これは震災復興に限ったことではありません。戦後74年間、高度経済成長という光と引き換えに地方崩壊という影を背負ったのです。
我々は今こそ、過去を謙虚に振り返り、今後の進むべき道を考え直すべきだと思います。

つばさクリニック院長 石川 亨


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