ゴー!医見

つばさクリニックでは毎月院内広報誌「ゴー!つばさ」内の院長のエッセイです

シリアで拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが、3年ぶりに解放され帰国しました。今年の7月には、黒づくめの人物から銃を突きつけられた状態で「今すぐ助けてください」とオレンジ色の囚人服姿で訴える映像が公開されるなどして、一刻も早い救出が待たれていましたが、今回の解放・帰国の知らせは喜ばしい限りです。

自己責任論

私の思いとは裏腹に、安田氏を批判する人たちも大勢います。「行くなと言われている場所に自己責任で行った結果でしょ?」、「ムカムカする。実に腹立たしい。この3年半、かかった費用はすべて自己負担してください」、「まずは『恥ずかしながら』と謝りなさい」等々。ネット上は特にひどく、安田氏へのヘイトコメントが垂れ流されています。
2004年にイラクでの邦人3名の人質事件の際も、現地でボランティア活動をしていた高遠菜穂子さんが解放後、「今後も活動を続けたい」と語ったことに対し、当時の小泉純一郎首相は「寝食忘れて救出に尽くしたのに、よくもそんなことが言えるな」と激昂しました。

海外の反応

このような自己責任論を、海外のメディアは異常な状況だと見ています。高遠さんの時はアメリカのパウエル国務長官は「イラクの人々のために危険を冒して現地入りする市民がいることを、日本人は誇りに思うべきだ」と発言しました。フランスの高級紙ル・モンドは高遠さんの活動を評価し、逆に日本で広がっていた自己責任論については「日本のイメージを高めたことを誇るべきなのに、政治家やメディアは逆にこきおろしている」と強く批判しています。

ジャーナリストの 存在意義

2004年の人質事件で自己責任論を振りかざした急先鋒は当時の自民党幹事長、安倍晋三氏でした。安倍氏をはじめとする政治家たちの新自由主義的な自己責任論の大合唱が国民に浸透し、今ではすっかり根づいてしまっているのです。
しかし、今回は救いも見られます。テレビのワイドショーで「自己責任論というのは、否定しておきたい、釘を刺しておきたい」という発言する人物が何人かいたのです。彼らは「ジャーナリストは何のためにいるんだ・それは民主主義を守るためですよ。」と続けました。
昨今の状況からも明らかなように、国や企業は自分たちに都合の悪いことはとことん隠します。でも、隠されているものを暴かない限り、国民は正確な判断ができません。正確な判断をするための情報を取ってくるのがジャーナリストです。
シリアには安田さんと同じように危険を顧みずに、大勢の外国人ジャーナリストが取材に行っています。彼らが取って来た情報がなければ我々はシリアのことは何も分かりません。しかも、外国人の情報だけでは不十分です。日本人が取って来た情報だからこそ日本人の役に立つのです。政府や大手メディアだって安田さんのようなジャーナリストから貴重な情報を得ることも多々あるのではないでしょうか。
自己責任論には「自分たちは責任を負いたくない」という無責任さが伴っていると思います。    

つばさクリニック院長 石川 亨


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