遥かなる復興への道 from 岩手県大槌町

通り一遍のマスコミ報道では分からない、被災地の生の姿を復興への熱い思いを込めて伝えます

観光バス仕事でバス会社に行き、行程表を見たら秋田空港で台湾からの観光客を乗せての北東北観光でした。4月3日(水)午前4時30分に会社を出発し途中、盛岡駅にて旅行会社の添乗員Sさんを乗せて一路、秋田空港へ。予定通りに秋田空港に到着、飛行機到着予定の午前9時を過ぎたのでバス停で待機。Sさんは空港に入って行き、到着ゲートに迎えに行きました。

トラブル発生?

Sさんが9時半を過ぎても出て来ない、おかしいな?と思いながら様子を見に行ったらSさんがお客さんに囲まれて何か言われているのです。日本語を少し喋れるお客さんも居ましたがペラペラではなく、台湾語、英語、日本語を織り交ぜた会話の中から私が聞き取れたのは「この旅行はキャンセルしたい」、「今直ぐに台湾に帰国したい」、「何とかならないか?」みたいな話でした。何かトラブル発生か?と思いながら聞いていたら、理由は台湾花蓮地震でした。

今回の台湾からの皆さんは台北発羽田経由の秋田行きの便に搭乗、その途中で台湾花蓮地震が発生し、スマホに家族、友人、知人から映像等が送られて来て、「直ぐに帰国せねば」となった様なのです。ビルが傾いたり、家々が倒壊した映像、画像を見てしまっては心配以外ありませんからね。私は東日本大震災の時、運良く妻、子供たち皆が城山体育館の高台に居るのを分かっていましたから冷静でいられましたが、目の前で町が流される光景、あの中に家族が居たらと思えば、とても冷静ではいられなかったし、その後の救助活動なども手伝う事はできなかったと思います。なのでお客さん達の今直ぐに台湾に帰りたいという気持ちは痛いほど分かりました。

日程変更

言葉の問題もあり話に進展が全く無く、このまま空港に居ても時間の無駄だと思ったので、「取り合えず昼食を取る予定だった食堂の予約をキャンセルしたら?それから宿泊予定のホテルに早めにチェックインさせてもらって、そこで地震の情報収集とかしながら話し合った方がいいのでは?」という様な提案をしてみました。Sさんは、「なるほど、そうだよね」と言い、その旨をお客さんに説明して待って頂き、連絡を取っていました。事情を説明したら食堂は無料でキャンセルさせてくれてホテルもそういう事情ならばと受け入れてくれるとの事で空港から直接、ホテルに向かった次第でした。

ホテル到着後、ロビーに集まり皆さんスマホを見せ合いながら話し合い、泣いている方も居まして、震災時の事を思い出し自分と重なる部分があって心中穏やかでいられませんでした。皆さんにすれば3泊4日の楽しい日本観光になる筈だったのにまさかこんな事になるとは夢にも思っていなかったでしょう。

羽田空港までお付き合い

結局、宿泊予定だった宿泊施設は全て無料でキャンセルさせてもらえるとの事でした。そして翌朝一番の飛行機の予約が取れ、ツアー代金も計算し直して帰国後、台湾の営業所の方から返金するとの事でした。そして、明日朝一番だから今から直ぐに羽田空港に向かえとの事で、「はぁ?羽田空港まで行くの?」と私もビックリした次第でした。という事で社長に連絡し、Sさんから事情説明をしてもらったら「行ってこい、事故を起こさないように安全運転で頼む!」と言われました。Sさんがこれを皆さんに説明したら、安堵したのか、ようやく笑みがこぼれて「謝謝」の大連呼でした。

という次第で羽田空港に向かい、何とか無事到着。降りて行く時に「運転手さんありがとう」と日本語で言う方も居て、素直に嬉しかったです。私はうろ覚えの台湾語?中国語?で「加油(ジャーヨウ)」(頑張って)と返していたら、泣きながら「ありがとう」と言いながら握手する方もいて照れました。

岩手県大槌町 小川 孝幸


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