遥かなる復興への道 from 岩手県大槌町

通り一遍のマスコミ報道では分からない、被災地の生の姿を復興への熱い思いを込めて伝えます

震災翌年から某大学の教授が震災時の惨状を撮影した素人写真家の写真の展示等を行うという支援活動をしていましたが、大学からの予算が出なくなるという事で令和3年度を持って支援活動を終了する事になり、最後の写真展示会が催されました。趣旨としては震災時の記憶を忘れず、後世に語り伝える為とか何とか、今回は最後の開催という事で様々な人に体験談を語ってもらい震災の記憶を絶やさずに語り伝えていきましょうという企画でした。主催者である某大学教授が被災した人?と申しますか、震災後に被災地で知己となった被災者達に声を掛けて講演?を依頼したとの事です。

皆、震災当日に何所で何をしていて地震が発生し、その後、高台に避難するまでの事などを簡潔に話していて、話を聞いていると津波襲来時の生死の分かれ目は本当に運が大きかったのかも?と改めて思いました。津波が到達する前、1度は高台に上がったものの何を思ったのか自宅に戻り、そのまま流された人の話、避難しようと高台に向って歩き出したが余りの混雑ぶりに途中で自宅に戻って流された人の話等々、いずれも一応避難して生き残った人達に、避難すっぺしとか声を掛けられていても自宅に戻ったりしているんですよね。声を掛けた方は、もっと強く言えば良かったと今でも思っていたりして、ある意味、後悔?しているが中々人に言えないみたいで今回、初めて言ったという人が多かったのは意外でした。

話を聞いていて気付いたのは避難した人の多くは自宅から海が見える地区に住んでいた人達という事、これは私もでしたが自宅の窓から海を見てすっかり水が引き、普段の干潮時ですら見えない海底が見えていたので「これは津波が来るんだろうな?」とは思いましたが、あれ程の巨大な津波が押し寄せるとまでは思いませんでした。堤防を超える程の津波なんて、あの時点では想像も出来なかったし、せいぜい海に繋がる排水口から海水が逆流して冠水する、くらいのイメージしかありませんでした。海が見えない町の中心市街地に住んでいた人達は海の異変に気付く事はできなかったでしょうし、避難しようとしている車の大渋滞を見て避難するかどうか家の前で悩んでいるうちに流されたという人達も多かったと思います。

私が子供達を迎えに行こうと大槌小学校に向った時には道路は既に大渋滞で殆ど動かない。その渋滞の中で停まっている時、たまたま知人のSさんが自宅の方から歩いて来て、車の窓越しに話をしたのですが、「この渋滞だしもう少し様子を見るか」とか言って自宅の方に戻って行きました。まさか、これが今生の別れになるとは思いませんでした。

震災後に分った事ですがSさんの家族はSさん夫婦と次男、全員が津波で流されて行方不明となっておりました。Sさんの長男は県外で仕事をしていたので無事でしたが震災後やっと大槌に辿り着き、避難所を回って両親と弟を探していた時に会いました。「うちの親父達を見ませんでしたか?」と聞かれ、Sさんと最後に話した時の事を伝えました。それを聞いて長男は項垂れるばかりで絶句状態でしたが、私も言い辛かったです。私ですらあの時、避難しようと言えば良かったと思う人は結構居りますので今回、初めて言ったという人達の気持ちも多少は理解できるつもりです。

あの日、大槌小学校に向った時に大渋滞の列に並んだままなら私達も津波に流されて間違いなく死んでいたと思います。この渋滞は大槌から出ようとする方向で町内に向う方向、つまり対向車線は全く車が来ませんでした。先の方を見れば大槌小学校の方へ右折しようとしてる車は居ないと見た私は対向車線を逆走して大槌小学校の方へ右折して大槌小学校から高台の中央公民館への上り口に入る事が出来ました。それから間もなくして津波が襲来したので本当に運が良かったと思います。

でも、正直申しまして現状を鑑みるに、本当に運が良かったのか悩む事があるのは確かです。人生とは山あり谷ありとは申せ、難しいものだと感じるばかりです。

岩手県大槌町 小川 孝幸


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