遥かなる復興への道 from 岩手県大槌町

通り一遍のマスコミ報道では分からない、被災地の生の姿を復興への熱い思いを込めて伝えます

私達に良くして下さった知人漁師のAさんの訃報に接し、信じられない思いがしています。享年79歳。Aさんはあの大地震の後、私の自宅の直ぐ裏の堤防に海の様子を見に来ていて、沖から迫り来る水隗を目の当たりにして驚き、自転車で高台に向かって猛ダッシュで逃げた、と言っていました。震災直後にこの話を聞いた時は爺ちゃんの歳であの津波のスピードから自転車で逃げ切れる訳がない、大袈裟に言っているのだろうと思っていたら本当でした。誰が撮っていたのか知りませんが高台から撮影された映像には私の自宅付近が津波にのみ込まれて流されて行く様子と共にAさんが津波の手前を高台側に向って自転車立ち漕ぎ猛ダッシュで走っている姿がハッキリと映り込んでいるではありませんか。その後、もう少しで墓地の登り口に着くという所で津波にのまれ押し流されましたが運よく山の斜面に押し付けられて必死に木にしがみついて助かった、とも言っていました。言われてみれば、あの日、高台にある中央公民館の体育館で全身ずぶ濡れのAさんを見たし、その後、石油ストーブを点けて部屋を暖めていたトレーニングルームで、Aさんが暖を取り服を乾かしていました。

Aさんの横には孫娘が居て一緒に暖を取っていた記憶があります。何故、鮮明に記憶しているのかと申せばAさんの孫娘Iちゃんと私の息子のヒデが同級生だったからです。

それから紆余曲折の末、私達が内陸に一時避難する事になった時、Iちゃんがヒデが内陸に行くなら私達も行くと言い出して一緒に内陸に一時避難しました。Aさんと奥さん、Aさんの娘夫婦とIちゃん、皆で避難しました。花巻市で子供達が学区外通学という事で避難所の近くの小学校に通うのも一緒でしたし、クラスも一緒でした。私はAさんがIちゃんを可愛がる様子が本当に好きでした。まるでちびまる子ちゃんのお爺ちゃん、友蔵さんみたいな感じで(笑)微笑ましかったです。様々なエピソードがありますが、Iちゃんが高校生になり、携帯を持つ様になると自分も携帯を買い、毎日決まった時間になると、I今日は何を食べた?とか、学校は楽しい?とか毎日、毎日、同じ事ばかり聞くんだよね、と、Iちゃんが教えてくれました。

そんなAさんが最近、体調が悪いと言っていたのを覚えていますが、まさか癌だったとは・・・ 何度か入退院を繰り返してはいても、普通に出漁しているので元気だと思っていたのですが急激に悪化したとの事で7月下旬に釜石で入院。もうダメだとなり大槌の病院に転院して来たんですよね。その転院の話を聞いた時は大分、加減が良くなったので転院するのだと思いましたが、実際は逆で本人の希望で大槌に転院したのだと後で聞きました。

転院後、数日で亡くなったのですが、Aさんは、後1年だけ生きていたい、Iの成人式の晴れ姿が見たかったと弱々しく言い、落涙していたそうです。娘夫婦は着物をレンタルしようとしましたが余りにも急でレンタルできませんでした。それでも娘の友人が着物を貸してくれる事になり、急いで借りて来て、着付けをして貰って着物姿を見せたら、Aさんは落涙しながらI綺麗だ、綺麗だと呟いて眠ったと聞きました。

自宅に戻り、着物を脱いでいたら病院から容体が急変してたった今、息を引き取りましたと連絡が来たのだとか。ひかりとヒデも可愛がって頂きましたし、本当に様々な想いが込み上げてきた次第でした。あれだけ可愛がっていたIちゃんの着物姿を見た後に直ぐ逝ってしまわれるとは色々な意味で安心したのかもしれないと娘夫婦が言っていました。Aさんが入院する前にスーパーで会い、少し話をしていた時にIが免許を取ったら一緒に御飯を食べに乗せて行ってもらうのが楽しみだと言っていたのが思い出されます。

岩手県大槌町 小川 孝幸


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