2020年1月 アリとキリギリス
昨年12月、もうひとりの天才?松山千春のコンサートに行って来ました。彼の場合、コンサートというよりもトークショーと言った方がいいくらいですが、その長い話の中で、面白いことを言っていました。それが、イソップ童話「アリとキリギリス」の令和版です。
夏の間遊び呆けていたキリギリス。冬が来たら食料がなくなって飢え死に寸前になりました。そこで夏の間せっせと働いて食料を蓄えていたアリさんを頼ってアリさんの家を訪ねます。
トントン、トントン
アリさんの家のドアをノックします。でも返事がありません。
「そうだよな。こんな怠け者の僕なんか、助けてくれるわけないよな」
そうつぶやきながら、アリさんの家の庭に回ります。
「さぞかし幸せな生活をしているのだろうな・・・」
そう思ってそっと窓からアリさんの家の中を覗いてみると・・・。
「!」
なんと、アリさんが倒れているではありませんか。そうなんです。アリさん、夏の間に働き過ぎて過労死してしまったのです。
「ああ・・・。アリさん・・・」
変わり果てたアリさんの姿に言葉を失うキリギリス。ここからがクライマックスです。
飢え死に寸前のキリギリス。アリさんの死を悼むと思いきや、アリさんの家に入るやいなや喜び勇んでアリさんが命と引き替えに蓄えた食料をむさぼるように食べ始めたのです。この後キリギリスは幸せな人生を過ごしたということです。
キリギリスは誰だ?
毎年年末に報道写真展という催しが開かれます。その年に起こった出来事を撮影した写真を鑑賞して一年を振り返るというものです。そこに安倍総理が出かけました。その時の彼のコメントが振るっています。
「初の国賓としてトランプ大統領をお迎えしました。そしてまた、日本で初めてのG20、大阪で開催しました。」
何を言い出すかと思えば、よりにもよって海外メディアから嘲笑のネタにされたトランプ大統領への過剰接待を得意気に振り返るとは……。でも、呆れたのはこのあとです。
「また、ラグビーワールドカップ、世界中のスポーツファン、ラグビーファンが日本にやって来た。日本は世界の真ん中で輝いた年になったのではないのかと思います。」
彼は昨年を「日本が世界の真ん中で輝いた年」などと宣いましたが、最も忘れてならないのは、激甚災害指定を受けた災害が3件も発生するという「自然災害に襲われた年」だったということです。この写真展でも、台風によって被災した各地の様子が伝えられ、千曲川の堤防が決壊して泥水が町を飲み込んだ様子など、数々の災害報道写真が並んでいたのです。彼はそれらの写真について一言も触れませんでした。人の痛みが分からない、そんな総理大臣なのです。
あの男こそがキリギリスです。今年こそアリさんの底力を見せてやりましょう!
つばさクリニック院長 石川 亨
「ゴー!医見:2020年1月 アリとキリギリス」をダウンロードする