ゴー!医見

つばさクリニックでは毎月院内広報誌「ゴー!つばさ」内の院長のエッセイです

石垣靖子先生と

石垣靖子先生と

12月1日、いきいき広場にて「高浜安立荘市民公開セミナー」が開催されました。講師は石垣靖子先生、ホスピスケアの草分けとも言える東札幌病院の看護師として、長年にわたってがんの終末期の患者さんのお世話をして来られました。現在は一線を退かれて北海道医療大学名誉教授となられています。ホスピスケアというのは緩和ケアとほぼ同じ意味で、がん患者さんが苦痛なく穏やかな生活を送れるように、患者さんに寄り添うケアのことを言います。

傍らにいるということ

講演のテーマは「傍らにいるということ」。約1時間30分の講演でしたが、ずっと立ってお話をされました。80歳代とは思えない、シャキッとした立ち姿で、優しく、そして時に力強く語ってくださいました。一つ一つの言葉に重みがあり、先生の人間力に圧倒された1時間30分でした。「傍らにいる」と言っても、ただいるだけではダメで、意味のある存在として寄り添わなければならない、と厳しい口調で言われました。

看護の力

2012年、故日野原重明先生は「看護の時代」ということを提唱されました。超高齢化社会では、医療の中心は医師ではなく看護師が担わなければならない、ということです。看護師が果たすべき責任は、患者が日常生活を普通に送れるように援助することと言われています。食事、排泄、身体の清潔、入浴等々に関して患者を援助する、これらは医師にはできない援助です。


成せば成る


身体拘束についてもお話をされました。身体拘束とは、患者が点滴を抜く、膀胱に入れた管を抜く、ということがないように、手足や体をベッドに縛り付けることです。昨今の医療現場では人権侵害ということで厳に慎まれています。しかし、現実的にはやむを得ず短時間だけ拘束してしまう、ということが少なくありません。2017年、金沢大学医学部付属病院は800ベッドを超える急性期の病院としては初めて「身体拘束ゼロ」を達成しました。そこには現場の看護師たちのたゆまない努力があったということです。その原動力となったのが「成せば成る」の心。たったの15分間だけ身体拘束をしてしまった看護師が上司である部長に痛恨の極みの念を伝えた、という話をされ、こういう看護師がいることを誇りに思う、と切々と語られました。

食べることの援助

たとえば、食べることの援助では、鼻からチューブが入った患者さんのお話をされました。先生の病院では、鼻から栄養を入れる前に患者さんに料理を見せて上げるのだそうです。あるいは、「これは○○のスープですよ」といって鼻の近くに持って行って匂いをかがせてあげるのです。その後で鼻の管から実際にそれを入れてあげて「どう?おいしいですか?」と聞くと「おいしい」と言ってくれるのだそうです。

また、眠れないという患者さんが「家ではお猪口で一杯飲んでいた」と言ったので、看護師さんが、薬を入れるカップに「ある液体」を入れて飲ませてあげた。そうしたらその人はよく眠れた、ということでした。その患者さんは「ある液体」を飲んだこと以上にそこまで考えてくれた、看護師さんの「気持ち」が嬉しかった、と言われたそうです。

患者ではなく人として

先生が最も伝えたかった言葉です。 
誰もが固有の名前があり、固有の歴史とその中で培われた固有の価値観を持つ人間である。そして、この世における一度だけの存在である。その人生はその人しか生きられない。だから、患者としてでなく、ひとりの大切な人間として扱わなければならない。

人として扱う、それは愛情を伝えること。常に「ありがとう」と言いなさい。心を込めて。

つばさクリニック院長 石川 亨


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