遥かなる復興への道 from 岩手県大槌町

通り一遍のマスコミ報道では分からない、被災地の生の姿を復興への熱い思いを込めて伝えます

その日の早朝、深夜便の仕事を終えて事務所に入って行ったら、社長が「飯食え」と言うので台所を見たら、何やら魚が皿に乗っかっていました。よく見るとサバ、切り身の塩焼きと〆サバでしたが。私の父親は遠洋漁業のマグロ船の漁師をしていて、帰って来ると食卓には魚ばかり。あとはクジラ、イルカ、オットセイ。食卓に並んだ物は普通に食べてはおりましたが毎日だと段々と、あまり魚は食べたくないと思っていましたね。三つ子の魂百までと申しますように今でも魚は苦手だという意識がありまして・・・。でも食べるには食べるし、美味しいとも思いますけどね。

微妙な「新サバ」

社長に

「余り食欲が無いので少しだけ頂きます」

と言って塩焼きを頂きましたが、脂が凄くて、ちょっとキツい?社長は

「新サバだから脂がのって美味しい」

と言ってましたが、微妙な味というか、はっきり言って書きづらいです(笑)。なので少ししか食べませんでした。でも社長には

「美味しいっすね」

と一応?言ったのですが社長の返事が無い。「あれ?寝てんのかな?」と思いつつ長椅子でゴロゴロしている社長の方を見たらブルブルと震えている。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」

と言いながら近くに行ったら

「具合が悪い、吐きそうだ。マジでヤバイ」

と言うんです。

「病院に行った方がいいんじゃ?」

と言ったら

「連れてってくれ」

と言うんですよ。これはただ事では無いと思ったので社長の車に乗せて県立病院に向かいました。

「社長大丈夫ですか?」

とか声を掛けても殆ど返事をしないし、嘔吐し出したので車を停めましたが嘔吐しっぱなしで動かない。「これ本当にヤバイかも?」と思ったので急いで病院まで突っ走りました。

社長は危篤?

救急外来に入って行き状況説明をしたら、看護師さんが車まで見に来てくれたのですが、ダッシュで病院の中に戻って行った。「えっ?何?どういう事?」と思っていたら先生と4人の看護師さんがストレッチャーを持って来て、社長を乗せて行きました。その時、「呼吸が」とか「脈拍が」とか言ってたんですが、社長の容体が全く不明で私はどうしたらよいのか分からず取り敢えず受け付けに行ったら

「あなたは御家族の方ですか?」

と聞くので

「いえ、従業員です」

と答えたら

「急いで御家族に連絡して下さい」

と言うのです。でも連絡先は分からないので、途方に暮れてロビーで座っていたらF君から電話が来た。

「頭が痛いし吐き気がしてマジで具合が悪くて走れない」

との事。それから程なくしてI君からも似た様な内容の電話が来た。このとき初めて「サバにあたった?」と思った次第でした。社長と運転手がこの状態では走れないのでどうにもならないと考えていたら、私も急に吐き気を催して来た。塩焼きを半身しか食べてないのに、と思いながらトイレに行って吐きました。その後腹痛、下痢が始まり本当にキツかったです。F君もI君も頭痛、腹痛、下痢、嘔吐があり、帰宅後に病院に行ったとの事でした。結果として社長が退院してくるまで当社は休業となってしまいました。

「新サバ」の正体

因みに、社長はストレッチャーで運ばれて行った時には呼吸困難、意識障害があり、血圧が60前後だったとか心臓が止まりかけたと言ってました。多分アナフィラキシーショックだったのでしょうね。それと、あのサバですが、荷物を積みに行った某市の魚市場で漁師のおっちゃんから貰ったものだそうです。しかも貰ってから2日経っての調理との事でした。

あの時社長は「新サバ」と言ってましたが、こういうのを「サバを読む」というんでしょうね。

岩手県大槌町 小川 孝幸


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