2021年10月 最終号~さよなら パール~
蝉の声も落ち着きはじめた8月29日、パールは旅立ってゆきました。
「誰も居ない時に、どうしていっちゃった?」
と言う思いが拭えなくてボランティアさんに話した折、
「きっとパールはお別れを言いたくなかったんだよ」
と言ってくれた言葉がとても心に落ちました。
カノンとは違って全く手がかからなかったパールの晩年。だけどその時が来たらどうやって看ようか、と常々心づもりはしていました。それなのに余りに早いお別れになってしまい、やり残したことの数々が胸に去来します。
甘えん坊のパール、最期くらいは小さい子たちに遠慮しないでしっかり甘えてから逝けばよかったのに‥ボルゾイには”俊敏”という意味がありますが風のように俊敏な旅立ちとなってしまいました。
もともと夏が苦手なパールは昨年も危うい時期がありましたが、秋風が吹く頃には復活して安心させてくれたことを思い出します。
今年は初夏から徐々にご飯が食べられなくなりいつもの半量が精一杯‥、リボンやテレサにお裾分けをしてずいぶん喜ばれていました。少しでもパールの食が進むようにと半生のフードをブレンドしてこしらえた特別食で食欲が戻ってきたのもつかの間、今度は大好きなお散歩に行けなくなりました。
1年くらい前から庭遊びをしてもけがが絶えず、ここ数ヶ月はテラスから降りるのにもやけに慎重になっていたパール、脚力の低下が老化の象徴でした。
一緒に過ごした11年、パールとの想い出は尽きません。
石川家に来た頃はまだ生後8ヶ月で、家が壊れそうなくらいたくさん柱をかじりました。
お散歩では引きが強くて、動く物を見るとつい追いかけたくなってしまいます。
脱走の常習犯で交通事故にもあいました。着地に失敗して骨折もしました。警察のお世話になったこともあります。存在感が大きなパールは何かをしでかすたびによく叱られて‥それでも家族が大好きなパールは、なでてほしくて、だっこもしてほしくて‥、どの写真をみても楽しそうに笑う優しいパールがいっぱいです。
ひとつ違いのリボンがやって来たときにはあまりのサイズの違いにつぶしちゃうんじゃないかと心配しましたがいつの間にかリボンの方が大きな態度でお膝を独占していました。テレサにとってパールはどんなわがままも聞いてくれるお母さんであり、やんちゃな遊びにつきあってくれる大親友でした。
知人にパールをひとりで逝かせた心苦しさを話すと、、
「でも他の子たちがみんな一緒に居てくれたんだよね」
と思いがけない言葉に少し胸のつかえがとれた気がしました。リボンやテレサが私達の分までパールに寄り添って見送ってくれていたならパールは安らかにその時を迎えられたのかもしれません。
セラピー活動ではいつも目を引いて沢山のみなさんに可愛がっていただきました。
”TEAM TSUBASA”の看板犬としてカノンとは唯一無二のベストペアでした。
ボランティアさんが聞かせてくれたパールの懐かしいエピソードは、私達とは違った視点でパールを見ていてくれたことに涙味の幸せを感じました。
セラピー活動を通してみなさんと過ごした時間は私にとってもかけがえのない宝物となりました。
長引くコロナ禍で思うような活動ができない今、少し離れたところからもう一度アニマルセラピーの意義を考えてみたいと思います。人にとっての幸せ、犬たちにとっての幸せ、双方の思いがかなうセラピー活動とはどんなものなのでしょうか?
今まで犬たちに注いでいただいたみなさまの愛情に感謝を込めて、またいつの日かセラピールームでお目にかかれる日を楽しみにしています。
看護師・アニマルセラピスト 石川 薫